2013年2月3日日曜日

リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間


リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間

いつも読書したときはまず図書館で借りて、引用をワードに残しているのだけれど、これはワードに写しきれなくて、PDFで残してたりする。高野さんのリッツ本の中ではバイブルのような本かもしれない。自分自身の心構えは当然ながら、最高のサービスをするための会社としての仕組みは、日常に負けることはあっても、やっぱりすごいと思わざるを得ない。

クレドのゴールド・スタンダードは、毎朝、明治神宮前で副都心線から千代田線に乗り換えたときに見返すのだけれど、いまだに全部覚えきれていない。未熟。


P34
チャールズは今まで考えることすらなかった、ある光景を思い浮かべていた。何十人という水兵が、船底に近い作業場の長いテーブルに向かって、毎日、何時間も黙々とパラシュートを折りたたみ、丁寧に詰めている姿を。
言葉を交わすことすらないパイロットたちの、しかし間違いなくその運命を左右する仕事を、彼らは黙々とやっていたのだ。
チャールズは言う。人は皆、気づかないうちに、誰かに様々なパラシュートを詰めてもらっている。物理的なパラシュートだけではなく、思いやりのパラシュート、情緒的なパラシュート、そして祈りのパラシュートも……。

P78
全従業員に向けてストーリーを配信するのには、二つの理由があります。ひとつは教育のため。ワオ・ストーリーに出てくるシチュエーションに遭遇したら自分はどうするのか。それを自分自身に問いかけて、お客様に感動を与えることについて考えてもらうのです。
そしてもうひとつの理由が従業員に「プライド&ジョイ」(誇りと喜び)を感じて仕事をしてもらうためです。(中略)人が自分の能力をもっとも発揮するのは、この「誇りと喜び」が一緒になって相乗効果を生んだときではないでしょうか。

リッツ・カールトンを支える七つの仕事の基本
1 PRIDE & JOY 誇りと喜びを持てば意欲が湧く
2 Don't think. Feel. 考える前に、お客様の温度を感じなさい
3 Let's have fun! 仕事を楽しめば自分の感性が発揮できる
4 CELEBRATION お祝いしたいと思う気持ちがサービスの質を高める
5 PASSION 情熱は組織を動かす大きなエネルギーになる
6 EMPOWERMENT お客様の願望をスピード解決

P94
リッツ・カールトンは、「心のためのチキンスープ」を非常に大切にするホテルです。これはアメリカの慣用句で、「心を暖める行動や話」という意味です。風邪を引いて体を温めなくてはいけないときにチキンスープを飲む習慣からきたものです。そこから派生して、心が風邪を引いて元気がないとき、気持ちが弱っているときに、心を温めて元気を取り戻させるものを「心のためのチキンスープ」と呼ぶのです。
テーブルの上のお花も「心のためのチキンスープ」のひとつです。お花を見て元気を取り戻してくださるお客様がひとりでもいるならば、私たちはお花を飾り続けたいのです。

P132
ファーストクラス・カードはスタッフ間のコミュニケーションツールとして機能しているだけではありません。
カードは手渡す前にコピーされ、オリジナルをヘルプしてくれた相手に渡し、写しを人事のセクションに回します。人事のほうでは、カードをもとに誰がどんなヘルプをしたのかを詳細に記録します。その結果は、次の人事査定の参考資料としても使われます。つまりファーストクラス・カードは、頑張っているスタッフを正当に評価するための仕組みでもあるのです。

P133
リッツ・カールトンで使われている、サービスに対するもうひとつの科学的なアプローチに、「サービス・クオリティ・インジケーター(SQI)」というのがあります。
これは、毎日の仕事やサービスを提供する場面で起きてくる欠陥事項、失敗事項、あるいは問題事項などを、一つひとつ数値化して、記録に残す作業のことを指します。まさに顧客不満足度の数値化のようなものです。
大切なのは、お客様に快適に過ごしていただくために、従業員一人ひとりがお客様と同じ感性で問題意識を持ちながら仕事に取り組むということ。
ホテルマンといえども人間ですから、完璧ということはありえませんし、間違いを犯すことも多々あります。心ならずもお客様に不快の念を与えてしまうこともあるでしょう。そういうとき、それを情緒的に解決するだけではなく、科学的にアプローチすることによって、できる限り完全な状態を創り出すための努力は必要なのです。

P158
単純に思える仕事もビジョンを持てば成功に結びつく
向上心の高い人は、バスボーイの仕事からでも何かを学び取り、それをお客様へのサービスになんとか還元しようと考えます。たんなる仕事だからという感覚でお皿を片づけている人とは働く姿勢が違うのです。
同じバスボーイの仕事でも、一年も経つと感性の高い人とそうでない人のあいだに圧倒的な差が開きます。
一方は、毎日運ぶお皿の感触を通して硬さや重さを知り、触っただけでどこのメーカーのお皿なのかがわかるようになります。何も考えていない人は、一年経っても同じ。相変わらず欠けやすいお皿も重ねて運んでいるに違いありません。
どうしてこのような差が開いてしまうのか。もちろん本人の資質の問題もありますが、私は会社が自社のビジョンやミッションをきちんと従業員に理解させているのかという問題が大きいと思います。
単純な作業をロボットのようにただこなしていくだけでは、やがて感性は摩耗していきます。しかし、そこに明確な目標やビジョンが加わると、単純な作業も自分の感性を発揮できる仕事へと様変わりします。
従業員の感性を鈍らせてしまうのは、単純作業や地味な仕事ではなく、「ビジョンなき仕事」なのです。

P161
毎日の「ラインナップ」(朝礼)が社員を育てる
大切なのは、自分の頭で考えるプロセスです。マニュアル化して「ああしなさい、こうしなさい」と教えても、企業理念やビジョンを浸透させることはできません。自社の理念やビジョンは、自分自身に問いかけてもらうことではじめて従業員の血となり肉となり、具体的なサービスへと反映されていくのです。
社員教育は、たとえるなら社員の心のなかに山道をつくるようなものかもしれません。年に一度しか人が歩かないような山道は、大掛かりに草を刈ったとしてもすぐにまた草が生えて行く手を塞ぎ、歩けなくなります。
歩きやすい道を作るには、毎日繰り返し歩いて踏みならしていくしかない。その作業としての行いが、毎日のラインナップなのです。

P164
会社のトレーニングは最小でいい
入社したスタッフにリッツ・カールトンが伝えるのは、ビジョン、ミッション、企業哲学といった、基本的な部分のみなのです。
それにも関わらず、お客様に満足度の高いサービスを提供できるようになっていくのは、従業員一人ひとりの向上心の高さと、それを育む職場環境の相乗効果だと思います。どうすればリッツ・カールトンの理念や哲学を具体的なかたちに表わすことができるのか。そのためには、どのようにして従業員全員の感性を高め、価値感を共有することができるのか。自らの行動と考え方を、『感性の羅針盤』であるクレドに照らし合わせて紡ぎだしていくという環境が整っているのです。
リッツ・カールトンでは、採用の段階で応募者の人間としての資質を重視しています。品格、協調性、集中力などですが、向上心もまた、とても大事な要素となります。向上心の高さは、ビジネスにおいてプロフェッショナルの条件ともなるからです。リッツ・カールトンの入社後の研修が最小であるということも、従業員が一定の基準をクリアしているという前提のもとに成り立っているといえるでしょう。

P166
目指す年収の五パーセントを自分に投資する
「タカノ、君は自分のキャリアパス(人生設計図)をちゃんと意識しながら働いているか。どの分野でもいい。本当に成功したいのであれば、目指す収入の五パーセントは自分に投資するくらいでなければだめだ。それと、もっともっとセンス(感性)を磨くことだ」
今の年収の五パーセントを投資するというのは、現在のキャリアを維持するために必要な投資。それに対して自分自身を磨き、より高みの成功に導くためには、まず目指す収入目標を明確に決めること。いまの年収五百万円を倍にすると決めたら、一千万円の五パーセントである五十万円を自分の成長のために、いま投資するということなのです。

P214
ビジネスにおいて「紳士淑女であるお客様にお仕えする紳士淑女である」ということの真意は、エレンのように、いただいたビジネス以上の価値をお客様に返すということ。これを毎年、毎年コツコツと繰り返すことです。紳士淑女への近道はありません。
いつも相手のことを考え、最高のホスピタリティを発揮するための努力を積み重ねていけば、それが自分の習慣となっていきます。そして習慣化された行動はホスピタリティマンとしての人格を形成していく。お客様の立場にたった会話、お客様の成功を手助けするための提案、それらは必ず結果となって表れ、お客様からの評価に結びついていきます。そして長い年月をかけてワインが樽で熟成するように、相互に尊敬しあえる関係が築かれていきます。
ホスピタリティ産業で働くことの本当の醍醐味はそこにあるのではないでしょうか。

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